cytokine growth factor

サイトカイン・
グロースファクターの研究

細胞にとって重要な役割をもつのが
サイトカイン・グロースファクター(細胞成長因子)です。

生物は細胞からできています。
その細胞にとって重要な役割をもつのがサイトカイン・グロースファクターです。

医師 川合祐美

01. 肌の仕組みとサイトカイン・グロースファクター

はじめに皮膚は基底層(右図中段)でつくられていています。角質細胞は表皮細胞が死んでしまった状態といわれており、10層ほどになっています。約50〜70%が水分になります。 そして、約3〜4日で剥がれいき1個の角質細胞が落ちたら、1個の表皮細胞が生まれるように増減がコントロールされいます。 表皮細胞は14日間で上に押し上げられていきます。(生活習慣や年齢などにより1〜2ヶ月かかるとも言われており、諸説あるようです)

お肌のハリや弾力を保つためには、真皮を構成するヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、コンドロイチンなどが重要であることはご存知の方も多いと思います。いとはじかれてしまう仕組みになっています。

コラーゲンは真皮の約70%も占めるともいわれていて、線維芽細胞から常に新しいものがつくられています。 その線維芽細胞も常に細胞を生み出せているのではなく、生活習慣や年を重ねるごとに活動が鈍くなるともいわれています。また、線維芽細胞が単独でコラーゲンやヒアルロン酸をつくりだすことができないという側面があります。

そこで“サイトカイン・グロースファクター ”が“鍵”になります。 サイトカイン・グロースファクター の1つ、FGFは線維芽細胞増殖因子といわれ線維芽細胞そのものを増殖する働きもします。 また、FGF-1は線維芽細胞といっしょにヒアルロン酸を生み出し、FGFだけでも23種類ほどあるとされていて、それぞれがいろいろな役目を担っています。

サイトカイン・グロースファクター は肌にとってとても重要な有効成分ですが、皮膚にはバリアゾーン(角質層+顆粒層)があり水分が多いとはじかれてしまう仕組みになっています。
非変性生プラセンタは、細胞液と細胞外液だけでつくられていますので、有効成分に加水したものではないので、バリアゾーンも浸透しやすいと考えています。

では、肌の上からコラーゲンやヒアルロン酸などは塗布することは無駄なのか?実は決して無駄なことではないのです。
肌表面の美肌菌(常在菌)にはこのヒアルロン酸などがとても有効のようです。(美肌菌については後日)

肌にとって大切なそれ以外のサイトカイン・グロースファクター にEGF(Epidermal Growth Factor)というものがあります。上皮成長因子であり、53個のアミノ酸から形成されるタンパク質です。皮膚にあるレセプラーと結合すると細胞分裂が起こります。その他、EGFにはコラーゲンの蓄積を促したりする働きもあります。こういった多くの働きを即すのが、サイトカイン・グロースファクター といわれています。

02. 細胞がつくられる仕組みとサイトカイン・グロースファクター
人間は37兆個の細胞で構成されている!?

細胞は生物の基本単位

体は受精によってできた1つの細胞が細胞分裂を繰り返すことでつくられます。
その細胞の1つ1つに全く同じDNAが螺旋状に折りたたまれて2対46本の染色体として格納されています。そのDNAには、筋肉、皮膚、脳、神経、臓器、髪の毛、酵素などのほぼ全てのタンパク質の設計図が入っています。そして、大人になるまでその細胞増殖が繰り返され、体が完成し成長が止まると、主な組織は細胞分裂しなくなります。

体を鍛えると、筋肉は増えてる?

大人の体を鍛えると、筋肉が増えたりしますが、それは細胞が増加するのではなく、骨格細胞が大きくなる現象、つまり「肥大」するからです。逆に病気で動けなくなると筋肉は小さくなります。つまり細胞が小さくなるので「萎縮」と呼ばれます。

髪の毛や皮膚は生まれかわる

一方で、死ぬまで細胞分裂を続けるものもあります。 それは、皮膚や髪の毛、血管成分などです。その分裂スピードは加齢によって遅くなりますが、それでも新たな細胞を生み続けます。

オートファジー

一それ以外の細胞が何もしていないわけではありません。 それがノーベル賞学者である大隅先生が発見した「オートファジー」です。細胞内を浄化しているといわれています。 オートファジーとは、細胞内の古いタンパク質を新しいものに取り替えるメカニズムです。 その新しいタンパク質を作り出すための設計図は、すべてDNAの中にありその部分の設計図のみが切り出させれいます。

DNAは司令塔?

DNAは4種類のヌクレチオを3つ並べることで、64通り(4x4x4=64)の記号をつくって司令できるようにしています。 例えばその4種類をA,G,C,Tとすると、AAAから始まってTTTで終わる64種類の記号があります。それらの記号の組み合わせによって1つのアミノ酸を 指定したり(例えばロイシンを指定する場合には6種類)それぞれのタンパク質の情報を切り出す開始地点(1種類)と終了地点(3種類)の記号が含ま れています。DNAは、必要な場所に必要なものを必要な量だけを精密にコントロールして指令を与えているのです。ですから、眼球から爪が生えること も起きませんし、骨に心筋細胞が生まれることもないのです。ちなみに、生物種の違いなどは、長さや並び方の違いから生まれてきます。

*遺伝子の解析は近年劇的に進んでいますが、実は98.5%はまだ解明できていないといわれています。さらには、この解析されていない98.5%のうち30%がウィルスに関するものだという報告もあります。
今後解析が進むことで、どういった世の中になるのでしょうか。 ちなみに、チンパンジーと人間の遺伝子は、99%同じだそうです。 また、私とあなたの違いは??実はわずか0.1%〜0.4%だそうです。

遺伝子発現

DNAから司令が出される、つまりはスイッチオンの状態になることを「遺伝子発現」と呼ばれています。 あるタンパク質が作られるのも、このスイッチがオンになることで開始されるのです。 そのきっかけは様々あります。 例えば、成長ホルモンであれば、そのホルモンに適合するレセプターと結合したあと、螺旋状のDNAにあるそれに対応したタンパク質の設計図部分が解かれてコピーの準備が始まります。 このように、ある働きをする因子が作用するには、その働きを作用させる側の細胞(標準細胞)に、その因子専用のレセプター(受容体)という物質がなければなりません。なぜなら、その因子とそのレセプターが結合することによって作用が始まる仕組みになっているからです。

mRNA(messenger RNA)

遺伝子にスイッチが入ると、RNAポリミラーゼⅡという酵素が設計図の開始地点に結合し、DNAに書かれているアミノ酸の並び順のコピーが始まり、コピー情報をもつmRNAというDNAに似た1本のヒモのようなものが作られます。この反応を「転写」と呼ばれます。 転写を完了したmRNAは、次にアミノ酸を連結する仕事をしているリボゾームという酵素に向かい、リボソームはmRNAにかかれている通りにアミノ酸を結合してペプチド鎖をつくり、ここでタンパクの1次構造が完成します。このリボゾームがペプチド鎖をつくる作業は「翻訳」と呼ばれています。 その後は、2次構造から4次構造を経て最終形が完成します。

グロースファクター(成長因子)

このように転写を促進する物質は「転写因子」と呼ばれており、その代表的なものが成長因子なのです。 成長因子には、サイトカインあるいはホルモンとして扱われているものがあり、細胞の増殖や分化・成熟を促進させるものも多くあります。例えば、プラセンタに多く含有するFGF(Fibroblast Growth Factor)は、繊維芽細胞増殖因子でその名の通り線維芽細胞を増殖させる因子です。 FGFには23種類ありそれぞれが機能が異なります。 それ以外にもEGF(Epidermal Growth Factor)は上皮成長因子であり、53個のアミノ酸から形成されるタンパク質です。

EGF 臨床試験

EGFの効果については、アメリカで行われた臨床試験で確認されています。 EGFを0.1μg/g(0.00001%=0.1ppm)配合したローションを約2ヶ月間(60日)に朝昼の2回使用したところ、表皮の新生細胞の成長率が平均284%促進、最高で835%促進したということです。これは、30〜60代の被験者の実験データですが、50歳以上の年齢でも新生細胞の成長が改善したことが確認されています。

サイトカイン

この臨床試験結果から読み取れるのは、成長因子は非常に微量であっても効果があるということです。 成長因子の量の差が、その臨床効果の質的な差を生み出すかどうかはわかりませんが、老化は確実にその因子も減少させるので、それを補う上では加齢や体調に合わせた的量があると考えています。 そして、臨床結果を左右するのは、アミノ酸の量ではなく、DNAにスイッチを入れる成長因子が鍵ではあると考えています。